入社3年目の小天狗

武道の世界には「初二段は素人」という言葉があります。初段、二段と言えば、あるていど鍛錬を積み重ねて、身体が動くようになり、技術もそこそこできてきたころです。一般的に言えば「すごい」レベルかも知れません。しかし、それぐらいがいちばん危ない。

「自分は初段になった。もう一人前だ」という自信がついてくると、腕試しをしたくなったり、人に自慢したくなったりします。しかし、初段、二段レベルというのは、あくまでも「カタチが身につき、それが再現できる」レベルにすぎません。いいかえれば、「カタチにいちばんとらわれているいる」レベルなのです。

「カタチにとらわれているレベル」とは、同じ流派のなかでは強いのです。相手の動きがわかるからです。しかし、相手が素人だと逆に通用しません。なぜなら、相手の動きに「カタチ」がなく、読めないからです。武道をやっているのに、あっさりと素人に負けてしまうことがあるのは、「こういうときは、こうくるはず」という思い込みにとらわれて、相手の動きの本質を読むことができないからです。

また、高段者からすれば初二段レベルがいちばん扱いやすいのも、同じ理由です。カタチにとらわれているので、どう動くかが手に取るようにわかってしまいます。素人のほうが怖いということを知っているのです。

つまり、武道は、初二段クラスまでは「弱くなる」のです。そこでそれに気づくことが出来る人は、三段、四段と進んでいくことができます。気づかない人は、カタチにとらわれたまま、そこで足踏みすることになるのです。

仕事でも同じことが言えます。仕事をはじめて3年、5年ぐらいしたころがいちばん危ない。会社のなかでは一人前として扱われるかもしれません。しかし、それはまだカタチが身についたレベル、経験したことのある状況なら対応できるというレベルであって、状況にあわせて自在に対応できるレベルではないのです。「最近、勢いがないね」「あんなによくできたのに」と言われるようになるのもこの頃です。

自分が通用しない状況に放り込まれて、自信を失ったり、天狗になった鼻をへし折られることもあるでしょう。しかし、これは悪いことではないのです。必要なプロセスです。天狗になるくらいの努力をしてきたからこそ、そこまで来ることができたのです。努力をしてこなかったなら、天狗になることもできません。頑張ったから天狗になれたのです。

どんどん天狗になりましょう。へし折られたら、「これも必要なプロセス」と開き直ればいいのです。そこで歩みをやめなければ、いつのまにか三段、四段レベルになっているのです。

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